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(月刊)ひとり総研

ベンチャー企業に関連する情報、ファイナンス情報、その他役に立ちそうなデータを月1ペースでまとめるブログ。

03_2014年上半期のスタートアップファイナンスまとめ(国内版)

INDEX
◆何を知りたいか
2014年上半期ファイナンスはざっくりどんな感じだったか。
②スタートアップは何のために資金調達をするのか。
③投資家はどのようなスタートアップに出資しているか
④ファイナンスをしたスタートアップはどのようなサービスなのか。
 
◆何を調べたか
①調査対象
②調査項目
 
◆何が分かったか ~2014年上半期スタートアップファイナンスのトレンド~
①2014年上半期ファイナンスはざっくりどんな感じだったか。 ~2014年上半期スタートアップファイナンス概況~
②スタートアップは何のために資金調達をするか。 ~2014年上半期のスタートアップファイナンスを『資金用途』の観点から考察する~
③投資家はどのようなスタートアップに出資しているか ~2014年上半期のスタートアップファイナンスを『投資家』の観点から考察する
④ファイナンスをしたスタートアップはどのようなサービスなのか。 ~2014年上半期のスタートアップファイナンスを『業種』の観点から考察する~
 
◆ひとり総研からの提案
①投資家の視点から
②スタートアップの視点から ~ファイナンスを実施する際に留意すべきこと~
 
 
 以下、本編です。今回は2014年上半期のスタートアップファイナンスをまとめてみました。この記事を通して最新のデータから読み取れるスタートアップファイナンスのトレンドを提供し、僭越ながら今後国内のスタートアップ市場を更に盛り上げるための提案までできればと思います。
 

◆何を知りたいか

①2014年上半期ファイナンスはざっくりどんな感じだったか。
2014年上半期のスタートアップ・ファイナンスを振り返って・・・
②スタートアップは何のために資金調達をするのか。
③投資家はどのようなスタートアップに出資しているか
④ファイナンスをしたスタートアップはどのようなサービスなのか。
 

◆何を調べたか

①調査対象
 下記項目にあてはまるファイナンスを調査対象としました。
 ・国内のスタートアップ企業によるファイナンス。
 ・「払込日」或いは「調達のプレスリリース日」が2014年1月1日~2014年6月30日のもの全件。
 ・投資家及び調達資金の情報が公開されていないファイナンスについては対象外。
 
②調査項目
 ①の「調査対象」に当てはまったファイナンス全件について、下記を調べました。
 ・調達日付(分からない場合はプレスリリース日)
 ・会社名
 ・創業日
 ・調達ラウンド
 ・調達金額
 ・出資者
 ・サービス内容
 ・資金用途
 ・サービスの独自性
 ・業種
 以下のセクションでは、↓のイメージ図の通り、各項目の関連性から、最近のスタートアップファイナンスのトレンドを分析してゆきます。
 

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 <イメージ図>
 

◆何が分かったか ~2014年上半期スタートアップファイナンスのトレンド~

 

2014年上半期ファイナンスはざっくりどんな感じだったか。 ~2014年上半期スタートアップファイナンス概況~

 今回の調査結果はざっくり版が図表03_01(簡易版)、詳細版が図表03_01(詳細版)になります。図表03_01(詳細版)については、サービスの独自性まで掘り下げて分析しておりますので、気になる方はDropboxからダウンロードして下さい。ひとり総研調べでは合計41件で、調達金額の平均は3億円程度。目立った案件としては、Gunosyの合計24億円、Sansanの14.6億円、メルカリの14.5億円、アカツキの14億円のファイナンスでしょう。一方でシード勢も元気です。創業年数1年以下のスタートアップは41件中6件。トランスリミット(ソーシャルクイズアプリ「Brain wars」)、クービック(ネット予約システムの「Coubic」)、ゴロー(ファッションキュレーションサイト「melo」)、ハッチ(ビッグデータ活用の人事採用系サービス「Talentio」)、スピカ(ネイル画像共有アプリ「ネイルブック」)、トレタ(予約管理台帳サービス「トレタ」)です。今後に要注目ですね。それぞれのサービスも独特で面白いので、是非詳細版もご覧下さい。(※1)

 

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<図表03_01(簡易版)>
 

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<図表03_01(詳細版)>
 
 

②スタートアップは何のために資金調達をするか。 ~2014年上半期のスタートアップファイナンスを『資金用途』の観点から考察する~

 スタートアップによる資金調達のニュースは華々しく、多くの業界関係者の注目を集めますが、本当に大切なのはスタートアップが調達した資金をどうやって使うか、ということです。そこでひとり総研では、会社の発表したプレスリリースをもとに、調達した資金の使途を調べました。まず、主な資金用途は以下の6パターンに分類されるものと考えました。
 
パターン1:開発(機能強化)
パターン2:採用
パターン3:マーケティング
パターン4:海外進出
パターン5:新規サービスのローンチ
パターン6:その他(上記パターン1~5に当てはまらないもの。又はどれも当てはまるもの。シード期に調達する資金は便宜上パターン6に分類する。)
 
 そして、2014年上半期のファイナンスそれぞれのプレスリリースを読んで、上記のパターン1~6に該当するものがあれば1件ずつカウントしてゆきます。例えば、2014年1月30日にファイナンスをした株式会社ワンオブゼムの資金用途は、プレスリリースによると以下の通りです。
 
メインプロダクト「ガチャウォリアーズ」大幅リニューアル(3月予定)及び年内ネイティブゲームタイトル3本のリリース。更に新規事業(ゲームコミュニティ事業及びB2Bマーケティング事業)の開始。
 
 この場合、パターン1「開発(機能強化)」とパターン5「新規サービスのローンチ」の2つが調達資金の使途であると判断します。このような作業を、2014年上半期のファイナンス全件について、実施した結果が、図表03_02です。

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<図表03_02>
 
 ところで、調達した資金の使途は、調達額や、調達した企業のステージ(調達ラウンド)によって変化するものなのでしょうか。もちろん相関性はありそうですが、具体的にどのように相関しているのでしょうか。以下のセクションでこの疑問に答えます。
 
 (ⅰ)調達規模と資金用途の関係
 このセクションでは、スタートアップが「どれくらいの燃料(調達資金)で、どのようなことができるのか」ということについて考えてゆきます。
 調達金額を3分類(10億円以上、1億円以上、1億円未満のファイナンスに分類。)し、それぞれの資金使途をまとめた円グラフが以下の3つです(図表03_03)。
 

f:id:vwwatcher0719:20140713175817p:plain

<図表03_03>
  
 調達額が10億超になると海外進出資金が目立ちます。(ⅱ)でラウンドごとの資金用途でも述べますが、ここで注意したいのが、調達額が大きいラウンドの全てが、レイターステージであるとは限らない点です。(ⅱ)の図表03_04のCラウンドの円グラフをご覧頂きたいのですが、10億円以上のファイナンスは海外進出目的の調達が目立ちますが、Cラウンドのファイナンスは海外進出目的の調達は13%に過ぎません。つまり、レイターステージでも調達額が大きくなければ海外進出に充てられるほどの資金を手にすることは出来ないと考えることができます。
 また、10億超のファイナンスが他の調達額に比べてマーケティングにあてられる点も注目すべきでしょう。(※2)
 
 (ⅱ)調達ラウンドと資金用途の関係
 スタートアップは成長のステージごとに調達した資金の使い道が異なると考えられます。このセクションでは、調達ラウンドごとに、調達した資金がどのような目的で使用されるのかということについて考えます。
 調達ラウンドごとのそれぞれの資金使途をまとめた円グラフが以下の図表03_04です。
 

f:id:vwwatcher0719:20140713175835p:plain

<図表03_04>
 
 図表03_04から読み取れる事実をまとめると以下の通りです。
 ・Seed期からレイターステージにかけて、人材採用のためのファイナンスは減少傾向にある。
 ・Cラウンドにおいてマーケティング資金を調達するファイナンスが目立つ(代表的なものはGunosy)。
 ・Bラウンドは開発及び人材採用以外はほぼ横並びであり、スタートアップによって調達した資金の用途がバラバラである。
 ・全体として開発(機能強化)のために資金調達したラウンドが多い。
 
 まず、Seed期からレイターステージにかけて、人材採用のためのファイナンスは減少傾向にある理由としては、シード資金の調達とともにコアメンバーを集め、そのメンバーを中心にEXITまで持っていくスタイルが主流なのだからかもしれません。この点、スタートアップ側にご留意いただきたいのが、EXITするのに必要なコストです。つまり、IPOをする場合、社内の管理体制がぐちゃぐちゃな会社を上場するわけにはいかないので、上場する前に堅牢な内部統制を整備すべきです。従って、上場が見えてきた段階でかまわないので、ある程度の人的コストをかけて管理面をフォローする必要があります。
 また、Cラウンドにおいてマーケティング資金を調達するファイナンスの件数が目立つ理由としては、レイターステージの調達になるとユーザー数もある程度の段階に達しているからだと考えられます。Webサービスの場合、会社の運営するサービスが1本だけ (例えば、Gunosyという会社が運営するサービスはGunosyというウェブサービス一本です。)であることも珍しくありません。従って、既存のユーザーに見放されないうちにマス展開を図り、リスクを低減するものと考えられ、そのために大規模なプロモーション施策をうつための資金調達を実施しているものと考えられます。
 Bラウンドは開発及び人材採用以外はほぼ横並びであり、スタートアップが調達した資金の用途がバラバラで、他のラウンドと少し様子が違います。つまり、調達した資金を何に使うかという意思決定は、アーリーステージとレイターステージではある程度どのスタートアップも同じ傾向にあるのに関わらず、ミドルステージでは、スタートアップがサービスを更にスケールさせるためにお金を使うポイントが、各企業ごとに異なるということです。そう考えると、「ミドルステージで調達した資金をどのような目的で使うか」という意思決定はスタートアップの今後を決定づける重要な意思決定であると考えられます。
 

③投資家はどのようなスタートアップに出資しているか ~2014年上半期のスタートアップファイナンスを『投資家』の観点から考察する

 投資家(VC)とスタートアップの関係にフォーカスしてみましょう。ひとり総研では、投資家を以下のように5タイプに分類したうえで、「どのタイプの投資家がどのタイミングでスタートアップにどれくらいのお金を入れる傾向にあるのか」を分析します。
 
タイプ1:金融系
⇒銀行・生損保・地銀に加え、証券等の金融機関を母体に設立されたもの。具体例は、みずほキャピタルジャフコ(野村系)等。
タイプ2:事業会社・CVC系
事業会社を母体に設立されたもの。具体例は、グリー、サイバーエージェントGMO等、その子会社が運営するファンドも含む。
タイプ3:独立系
⇒どのパターンにも属しない投資家。具体例はグロービス、日本テクノロジーベンチャーキャピタル等。ここ最近は個人が運営するファンドも多く見受けられる(磯崎氏のFemtoや木下氏のSkyland等)。
タイプ4:政府系
⇒公的機関により設立されたもの。産業革新機構等。
タイプ5:海外投資家
⇒海外の投資家。投資家はパターン1~4のなかでも、海外から出資している投資家は別枠でカウントします。
 
 なお、2014年上半期、投資家のタイプ別スタートアップへの件数は以下の図表03_05にあります。事業会社・CVC系が割合として大きいですね。事業会社系はサービスのシナジーを見込んでの投資がケースとして多いので、大企業がスタートアップのサービスに熱視線を送っているということでしょうか。だとしたら非常に良い傾向だと思います。
 

f:id:vwwatcher0719:20140713162736p:plain

<図表03_05>
 
 (ⅰ)調達規模と投資家の関係 
 このセクションでは、ざっくり言うと「一番金払いのいいベンチャーキャピタルはどういうベンチャーキャピタルか」ということについて考えてゆきます。(もちろん2014年上半期だけのデータから読み取れる結論なので、普遍的な結論は出せないことにご留意下さい。)
 ひとり総研では、図表03_01のデータを、それぞれのタイプの投資家ごとに集計し、ファイナンス規模(調達額)の平均値及び中央値をとってみました(※3)。その結果が図表03_06になります。
 

f:id:vwwatcher0719:20140713162747p:plain

<図表03-06>
 
 件数自体が少ない海外・政府系を除くと、独立系の出資するラウンドの規模は大きい点が特徴的。独立系VCはキャピタルゲイン一本で食っていかなければならないVCが殆どですので、業界でも話題になる大きなディールに絡んでくるケースが多くあるためと考えられます。次に、CVC・事業会社系に注目すると、件数が多いという要因があるものの、全体としてラウンドの規模に大きな振れ幅があります。これについては次のセクションで触れます。
 
 (ⅱ)調達ラウンドと出資者の関係
 このセクションでは、「どういう投資家がどの段階で資本参加してくれるのか」ということについて考えます。結果は、以下の図表03_07にまとめました。
 

f:id:vwwatcher0719:20140713162758p:plain

<図表03_07>
 
 図表03_07から読み取れることとしては、以下のような事実です。
 ・金融系はCラウンドからの参加が多い。一方で創業期のスタートアップへの投資件数は少ない。
 ・CVC・事業会社系及び独立系に関しては、金融系とは異なりレイター投資の件数少ない。
 ・CVC・事業会社系はSeed~Aラウンドの創業期のスタートアップへの投資案件が多い。
 ・独立系はCラウンドへの投資案件が少ない。Seed,Bラウンドへの投資案件が多い。
 
 金融系VCの出資案件にレイターステージのスタートアップが多いのは、このステージの企業には、IPOやデットでの調達というイベントが控えているためと考えられます。つまり、金融系VCは、同グループの証券会社や銀行とともに囲い込みを行うインセンティブがあります。従って、自社グループによる囲い込みを効率的に行うためには、上場するかしないかわからないアーリーステージのスタートアップより、レイターステージのスタートアップへ出資するほうが確実です。そう考えると、金融系VCによる資本参加はIPOへのシグナルになるかもしれません。
 また、独立系VCは金融機関等と異なりファンドサイズが小さいものが多いです。従って、他のVCと差別化を図るためには積極的なハンズオンを行うインセンティブがあると考えられます。ハンズオンを行うためにはアーリーステージから経営者とコミュニケーションをとる必要があるため、比較的アーリーステージでの資本参加が多いのでしょう。(しかしVCによっては他のステージから資本参加するものもあり、VCの得意分野によって出資をうけるタイミングは異なるものと思われます。)
 CVC・事業会社の出資パターンは以下の2つ。
  (Ⅰ)サービスがしっかり回りはじめた時期に出資し、スタートアップが事業会社と組んで新規サービスをローンチするパターン。
  (Ⅱ)シードラウンドで出資をすることで、事業会社の既存サービスとシナジーがありそうなサービスを囲い込む。
 つまり、どのラウンドであっても、「事業とのシナジー」を中心に投資意思決定を行うものと考えられます。だから、上記のセクション(ⅰ)で示した通り調達額の大きさがバラバラだったんですね。
 

④ファイナンスをしたスタートアップはどのようなサービスなのか。 ~2014年上半期のスタートアップファイナンスを『業種』の観点から考察する~

 2014年上半期のスタートアップによる資金調達ですが、ざっくりサービスの属性(業種)を分類したうえで、今どんなジャンルのサービスに資金が集中しているのかを分析します。とは言うものの、一言でそのサービスの特徴を表現するのは難しいため、分類を3つ設けました(図表03_08)。分類①から分類③にかけて、分類が細かくなっているイメージです。
 

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<図表03_08>
 
 ちなみに、上記の分類とは別に、BtoBとBtoCで分類して集計したところ、図表03_09のようになりました。ファイナンスの件数ベースでは、BtoCのほうがBtoBをダブルスコアで上回っています。1件あたりの調達額もBtoCがBtoBを上回っています。新興市場のサービスはBtoC中心ということです。
 

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<図表03_09>
 
 (ⅰ)調達規模とサービスの属性(業種)の関係
 このセクションでは、「どのサービスが投資家の注目を集めているのか」ということを考えます。それぞれの分類ベースで調達金額をまとめた図表03_10をご覧下さい。
 

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<図表03_10>
 
 ハードウェアよりweb serviceの方がお金を集めていることに関しては何も違和感はありませんが、もうちょっとハードウェアスタートアップのファイナンスの事例が増えてきてもいいかなと個人的には思っています。詳しくは以前の記事(02_ハードウェア・ベンチャーのファイナンスをまとめたみた - (月刊)ひとり総研)をご参照下さい。
 さて、分類②をご覧下さい。「メディア」が、調達金額、調達件数ともに1位です。つまり、2014年上半期で最も投資家の注目を集めたジャンルが「メディア」ということです。具体的な企業名を挙げると、「つみき(filmarks)」「tab」「白ヤギコーポレーション(kamelio)」「Gunosy」「SUVACO」「カタリズム(あそびゅー!)」「賃貸情報(キャッシュバック賃貸)」。それぞれのサービス内容は図表03_01でご覧下さい。メディアといってもたくさんあるので、これを更に細かく分類すると、図表03_11のようになります。最もメジャーなジャンルとしてCGM、次にバーティカルメディア、その後にニュースアプリ枠でキュレーションメディアのGunosyとフォローメディアのKamelioが並ぶかたちとなっております。世の中に情報があふれているからこそ、その情報をどうやって見せるかという方法に、消費者が高い付加価値を見出しているのかもしれません。
 

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<図表03_11>
 
 
 次点で、「コマース」が、調達金額、調達件数ともに2位です。具体的な企業名を挙げると、「メルカリ」「Tokyo Otaku Mode」「ゴロー(melo)」「BASE」「セカイエ」「クリーマ」がこれに該当します。こちらもそれぞれのサービスの内容は図表03_01でご覧頂きたいのですが、この中でも、「メルカリ」「BASE」「クリーマ」がCtoCコマースである点にも注目です。
 分類③をご覧いただくと、SNSが件数、調達金額ともに大きいです。分類③はサービスの副次的な特徴を分類したものなので、このデータから読み取れるのは、純粋なSNSメッセンジャーアプリ等)より、既存のサービスにSNS要素を掛け合わせたサービスが投資家の注目を集めているものと考えられます。具体的には、ゲーム×SNS(例えば「Brainwars」等のソーシャルゲーム)、CGM×SNS(例えば「つみき(Filmarks)」等のメディア型のSNS)、HRM×SNS(例えば「wizpra」等の社内SNS)などなど。さまざまなジャンルが生まれています。
 
 (ⅱ)調達ラウンドとサービスの属性(業種)の関係
   このセクションでは、「どのようなサービスが何回目の出資を受けているのか」ということを調べることで、スタートアップ業界において将来的にバズるであろう業種を推定します。
 ある業種のあるスタートアップ(A社とします。)が、レイターステージ(Cラウンド)の調達を実施したとします。そのサービスが以前ピボット(企業がサービスを見直すこと)しなかったものと仮定すると、当該サービスは今回の調達で最低でも3回目の調達をしたことになります。従って、そのサービスの属する市場は、先行者であるA社によりある程度開拓されていると考えられるため、あとは価格競争による競争原理が働きます。つまり、その市場で取引されるサービスは既にコモディティ化しているものと考えます。逆に言うと、ある特定の業種に属するスタートアップがほとんどシード、アーリーステージで調達を実施している場合、その業種はまだ先行者がいない市場であると考えられます。つまり、こういう市場にスタートアップが参入すれば、ポジショニング理論的には競争優位を保つ可能性が高いといえます。
 この原理をもとに(ⅰ)の分類②をベースとして最も進んでいる調達ラウンドとサービスの属性(業種)の関係を示したのが図表03_12です。図表03_12では、縦軸に「普及/認知度」を、横軸に「サービスの属性(業種)」及び「調達ラウンド」をとっています。イメージとしては、左に行けば行くほど目新しい技術やサービス領域でブルーオーシャン、右に行けば行くほどコモディティ化してレッドオーシャンになるといったところです。この図表はGartnerが毎年発表している「Hype Cycle」から着想を得たものです。こちらも面白いので読んでみて下さい。
 

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<図表03_12>
 
 上記図表から読み取れることは以下の通りです。
 
 ・Fintech:freee1社でCラウンド調達。但し、この分野は既に大企業(弥生会計、OBIC等)が同様の事業を展開しているため、既に地獄(レッドオーシャン)。爆速で成長するfreeeが既存の大企業とどうやって戦うのかに目が離せない。
 ・メディア:地獄(レッドオーシャン)。プレイヤーが多い上に既にIPO間近までスケールしている先行者が存在している。
 
 ・コマース:投資家からの注目度は高く、プレイヤーは多いものの、形勢はまだ決していない。しかし、この分野は参入障壁がかなり低いため、ブルーオーシャンというわけではなく、近いうちに勝者が決まるものと考えられる。今後の各社の動きに注目。
 ・システム導入:シード資金を調達している2社は「webpay」と「アイキューブドシステムズ(COLMO)」。どちらも既存の大企業が提供していない方法でシステム導入を支援するツールを提供している。
 
 個人的にはサービスとして2014年下半期にバズる可能性があると考えている分野は「コマース」。とくにシード資金を調達したばかりの「ゴロー(melo)」や「BASE」の今後が気になります。また、大きな括りではありますが、スマートフォンの普及による消費者の購買行動の変化に伴い、企業側のwebサイトや決済システムにも変化が生じています。BtoBでこの変化に対応できるサービスがまだまだ出てくるのではないかなと個人的には思っています。
 

◆ひとり総研からの提案

 

①投資家の視点から

 以上を振り返ったとき筆者がうけた印象は、調達した資金を元手に海外進出をするスタートアップが少ないのではないか、ということ。つまり、IPO前にグローバル展開をしているスタートアップが少ないし、日本のVCはまだまだスタートアップの海外進出を後押しできていないのでは?ということです。
 まず、現状日本で勢いのある(=VCからお金をたくさん調達している)スタートアップは、CGMを中心としたメディア領域のビジネスや、SNS要素を取り入れたソーシャル系のビジネスです。そういったビジネスが海外展開をする場合、外国語への対応、現地の法規制への対応だけでなく、現地の文化にうまく溶け込めるようにサービスを再構築しなければなりません。そう考えると、海外展開に対応するためのコストは莫大です。しかし、「②(ⅰ)調達規模と資金用途の関係」で示した通り、海外展開のための資金調達を行っている事例はまだまだ少ない(全体の10%)ように思えます。IPOによって海外展開に向けた資金調達をするというケースもあるとは思いますが、国内の飽きっぽいユーザーにリーチしているだけのサービスに、果たして市場は高いバリューをつけるのでしょうか。(※4)
 スタートアップ側では(2014年下半期に調達を完了したgumiのように)世界を相手に戦うという意識を従業員全員で持ち続けるのは当然ですが、VC側でも現地のネットワークを使って、できるだけ低コストで海外進出をさせてあげるようなハンズオンの仕方ができる投資家が今よりもっともっと増えることが望まれます。
 

②スタートアップの視点から ~ファイナンスを実施する際に留意すべきこと~

2014年上半期のファイナンス事例を組み合わせて、ひとり総研なりの「資金調達の勝ちパターン」を描いてみました。
 
資金調達の勝ちパターン≫
・アーリーステージで、調達した資金を使ってある程度の人材確保⇒サービスをいっきに回して、自社サービスがマス化したときに浮き彫りになるであろうボトルネックを把握しておく。
・ミドル(Bラウンド)では自社のボトルネックを解消し、さらにサービスをスケールさせるための資金を調達する。積極的なハンズオンを行ってくれる独立系のVCに出資してもらうのもあり。
・レイターステージでは、自社サービスがターゲットユーザーをいっきに増やしてマス化するための資金を調達する。海外に進出するのも良いし、新規サービスをローンチするも良い。効果があると確信していれば、CMを流しても良いかもしれない。
 
飽くまで理想的な勝ちパターンに過ぎないので、この通りに調達をしている会社はあまりないと思います。
ただ、アーリーステージのスタートアップは、お金がなくてもKPIを回しサービスの仮説検証をすることはできます。一方で、仮説検証した結果、改善されたサービスをより多くのユーザーに使ってもらうことや、リソースが足りないためにカバーしきれていない課題には、資金がないと対応できません。なので、より良いサービスを作るためには、ミドルの段階である程度営業キャッシュをプラスに保つことが理想的であると考えられます。
以上より、(釈迦に説法であることは承知のうえですが、)サービスの成長段階で資金調達を成功させたいスタートアップの経営者(CFO)は、VCに対してこういう説得の仕方をするのが親切なのではないかなと思います。
 
「うちのサービスは、今こういう課題を抱えている。この課題を解決するためには、こういう施策をいつまでに実施すべき。そのためにはいつまでにどれくらいの金額が欲しい。」
 
 今回の記事は以上です。来月は2014年上半期のスタートアップファイナンスまとめ(海外版)をアップします。この記事に関して何か間違いや疑問点が御座いましたら、是非メールかコメント欄にお願いします。この記事を作成している筆者は一人なのでどうしてもいい加減なところはあると思います。記事を見てくれている皆さんとこの記事を完成させてゆきたいと思います。どうぞ宜しくお願いします。
 

 

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以下、注釈
※1:ちなみに、図表03_01の「出資者」の名称ですが、投資事業有限責任組合の名前を書いてたり、ファンド運営のGPを書いてたりと一環したルールによる記載がなされておりません。大変申し訳ありませんがそこらへんは見過ごして頂けると幸いです。
 
※2:1億円未満の調達の殆どはシード資金(その他分類)です。
 
※3:どのベンチャーキャピタルがいくら出資したかという細かいデータについては入手できない場合もありますので、簡便的にスタートアップが調達した資金の総額を集計しています。
 
※4:ユーザーを増やしてネットワーク効果を高めるのがメディアやSNSの一義的な目的だとすれば、どうしても私には、日本のユーザーにだけリーチしているサービスでは心もとないと感じてしまいます。
 
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以下、参考文献
宍戸善一・ベンチャー・ロー・フォーラム(編).2010.ベンチャー企業の法務・財務戦略 商事法務
比佐優子.2009.銀行系ベンチャーキャピタルIPOが企業の設備投資行動に与える影響:2-3