(月刊)ひとり総研

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(補足)スタートアップにおけるPre-IPOラウンドのvaluationについて

前回の記事でスタートアップにおけるPre-IPOラウンド(上場直前のファイナンス)のvaluationが、それ以前のラウンドに比べて跳ね上がる傾向がある点について言及しました。

この理由として本ブログで挙げた仮説としては、①Pre-IPOファイナンスは既にIPOすることが確実と見込まれるタイミングで行われることが多く、VCがとるべきリスクが通常のベンチャー投資と比べて少ないこと、②Pre-IPOラウンドで資本参加した投資家は、IPOしたタイミングで売り抜けるのではなく、IPO後、さらにバリューアップすることを見込んだ上で出資していると考えられることを挙げました。

 

今回は米国におけるPre-IPOファイナンスでのvaluationを調査したレポートを見つけたので手短に紹介します。

レポートを公表したのは、Sillicon Valleyの法律事務所Fenwick & West LLPであり、2014年から2015年においてIPOした米国のスタートアップのPre-IPOファイナンスについて調べています。

Execuive Summaryを元にレポートの内容をまとめると以下の通りです。

  1. PreIPOラウンドで発行される株式の価値(valuation)は普通株式に比べると170%程度

  2. 実際のIPOデータを見てみると、PreIPOラウンドにおける「IPO時の株価xx円を下回ったら追加発行」といったラチェット条項の実効性は低いといえる。なぜなら2015年にIPOした会社においては、IPO後に追加発行された普通株式は全体の発行済株式数の3%程度だから。

  3. 2015年にIPOした会社のうち、PreIPOにおいて普通株式より議決権が多い優先株式を付与された株主がいる会社、いわゆるDual Classで上場している会社は、24%も存在する(cf 既に上場している企業では9%程度)。

  4. Pre IPOラウンドに参加した株主が投資先のIPO時にどのように行動するか?2015年にIPOした会社のPre IPOラウンド参加株主のうち、22%は売却するどころか追加取得を行い、29%は売却、残り49%はそのままま。

  5. 2015年にIPOした会社のうち、79%もの会社がPreIPO→IPOでアップラウンドしている。

  6. 上記におけるPreIPO→IPOのvaluation増加は平均で+94%、中央値で+36%。

米国においては日本と異なり、株式の新規発行は種類株式で行われることが一般的であることを念頭に置くと理解が深まると思います。

原文はこちらです。

The Effect of Companies’ Late Stage Venture Financings on Their IPOs 2014 - 2015

では。

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